[新版] MBAクリティカル・シンキング

「頭でわかる」けど「あと一歩の部分ができない」と言うことは多い。得てしてその後一歩が重要だったりする。「その最後の一山を越えたら、お客様に受け入れられたのに」とか。わかることとできることは紙一重のように見えるけど、その差はゼロとイチほど大きかったりする。

[新版] MBAクリティカル・シンキング

[新版] MBAクリティカル・シンキング

久々に読み返してみた。初心に返る。

ついでにずっと前にGlobisを受講したときの講評を読み返す(最終レポートに関する講評)

その意味では論理思考の基本を押さえつつあります。しかしどうも肝心なところの詰めが甘く、成果に結びついていない状況です。特にそれぞれの部分で「なぜそう言えるのか?」「なぜそこが問題だと特定できるのか?」といったところの理由付けに課題があります。

正直、当時はピンと来なかった。(どこがダメなのかわからなかった)。読み返してみると何とも的確なアドバイスをいただいていたものだ。「成果に結びついていない」。そう。最後の一山を越えないと成果はゼロの時だってある。
さらに。

全体としてメッセージの抽象度が高くインパクトが弱いですね。つまりもっと具体的な言葉で、ある施策が何を生み出
しているのか?それぞれの策を貫くポリシーは何か?を考え表現しましょう。そして他社とはここが違う、これだから他社にはできない、という二点が見えるように意味合いを絞り出して下さい。

もうこれくらいでいいか、と諦めてしまう。それがよくない。「もっとよくできないか」という気持ちを維持できない。
なので肝心な部分で一人よがり(自分には理解できるが、読み手のことまで意識できていない)になってしまう。

続いて、問題の原因抽出とアクションプランについて。

(問題を)分解をしてその中からいくつかをポイントとして抽出していますが、その根拠が良く分からないところがあります。特にコストや時間はある程度見積もるしかないのですが、「効果」は問題分析をさらにしっかり行うことで根拠づけを行えるはずです。
ロジックツリーは論理的にあり得る可能性を考え、チェックリストを作る作業であるので、様々な選択肢が出てきてよいのですが、そこから問題箇所を特定する場合、なぜそこに特定できるのか?の理由付けが必要になります。
ビジネスでは100%正解、ということはあまりないので、必ず何らかの基準で選ぶ、ということになります。その判断の妥当性が問題になることが多いはずです。ここをしっかり説明できるようになると格段に説得力が増すと思いますので曖昧にせず考え、説明する癖をつけましょう。

まさにここ。「説明できるようになると格段に説得力が増すと思いますので曖昧にせず考え、説明する癖をつけましょう」この部分は今も多分解消できていない。「曖昧にせず考え」られていないのは、仮説思考がうまくできていないと言うことだと思う。それを「わかっている」けど「うまくできない」。これってトレーニングで何とかなるものなのだろうか?

講評は下記のメッセージで締められている。

読み手に、なぜそこが本質的な原因なのか?その解決策がなぜ効果的なのか?がわかるように説明する必要があります。例えば次のような流れです。
1.まず状況を大きく見て「問題がある」と思われるポイントを洗い出す
2.上記のポイントをOutputで分解・構造化し、どこが問題か?を特定する
3.問題箇所のOutputに対応するInputを洗い出し、どこが問題か?を特定する
4.問題相互間の因果関係を検討し本質的な原因=解決すべき課題を明らかにする
5.解決すべき課題に対して、それを解決するアクションプランを複数立案する
6.目的や状況に応じた判断基準に基づき、適切なアクションを選択する

今回の場合、4が抜けていることと、3以降の問題特定の根拠付けに課題がありますね。

その通り。正直このレポートの後半は思考能力が麻痺してグダグダだったんだけど、それ以外のときでも基本的に4.以降がうまくないんだろう。恐らく1-3は大体いいはず。4-6にたりないものは「説得力」。それを与えるものが「常に仮説を検証する意識」と「この辺でいいだろう」と怠けないこと。かな?

それを「わかる」から「できる」に早く変えたい。

2006年6月27日の日記

について、著者の柴原さんからコメントをいただいた。
コメント

柴原さんどうもありがとうございます。

で、なんと本の内容をWebでも公開してさらに広めていったり、ブラッシュアップしたりしたいとのこと。多分、今までどのコンサルもどのSIerもここまでのディテールを公開したことなんてなかったと思う。(書籍含めて、いわんやWebなんて)

ここのページで今後展開されていくとのこと。要注目。

インタープレイ コンサルティング 株式会社 Blog

なんかわくわくしてくる感じ。二つの面で面白いと思う。

1つは、もちろん、「検討の進め方・ノウハウ」とか「アウトプット」と言った「自分の知や経験の結晶」がWebに公開されることで、どういう展開になるのか、ということ。例えば、この方法論がIT業界に広く浸透して、ユーザー企業が自力でこの方法論を運用できるようになったりすれば(かなり楽観論だけど)、少なくともこのノウハウ部分を売り物にしたビジネスは一気に価値を落とすだろうということ。たとえ、この方法論だけではうまく行かないとしても、今後そのうまく行かないところを補強するノウハウとかアイデアが出てきて、同じように公開されることで、ユーザー企業の計画能力が高まれば、計画立案するだけのコンサルなんて市場価値を失うんじゃないだろうかと思う。

ITサービス業界のコモディティ化というのが、どういう形で起こるのか、今ひとつ実感がわかなかったけど、こういう形で今まさに始まろうとしているのかもしれない。エキサイティング。少なくともこの分野のレシピは提供された。


それと、もう1つ。柴原さんはボランティアではないということ。事業改革や戦略立案のコンサル会社をやっていて、その人がまさに本業のノウハウを公開しているということ。

ってことは、このノウハウの部分がコモディティ化しても「少なくとも自分たちは困らない」と判断したのだろう。ノウハウをを一般公開して、たとえあまねくビジネスマンがこの方法論を身につけたとしても、それでも食っていけるだけの「別の」強力な差別化要素を持っているってことだと思う。そして、「むしろ基礎的な進め方、方法論については多くの人に知っておいて欲しい(特に自分のクライアントに予習しておいて欲しい)」と思っている。

自分達はさらに上位の差別化要素がちゃんとあるから、それ以外の部分は積極的に公開しよう。という発想って今までなかったんじゃないかと思う。この流れに触発されて同業他社にも同じような動きが広まればいいのになあ、と淡く期待。

で、「別の差別化要素」はなんだろう、と言うのも気になる。

一つは「わかる」と「できる」は違う、ってことかなと思う。