マルティン・シュタットフェルトの演奏会に行ってきた。寝不足がたたってひどく眠かった。そもそも今回はがらにもなくS席をとってしまっていて、いつもの2階とか3階の席と違って1階の平たい座席って言うのはとても視野が狭くて困った。前から10列目くらいだったんだけど、前の人の頭がじゃまでピアニストは見えないし(そもそも背中しか見えない位置だったけど)、目に映るのはパイプオルガンの太い動脈と天井と時折見えるピアニストの姿くらいだった。で、とにかく何故か眠かった。演奏が悪かったわけじゃない。多分。そういえばピアノ独奏の演奏会って初めての体験だったかもしれない。

で、肝心のゴールドベルグ変奏曲だけど、期待に応えて冒頭から1オクターブ高くなったり、左手と右手を逆さまに弾いたりしてエキセントリックな演奏。ただ演奏家その人は写真で見たよりも誠実そうな若者でちょっと拍子抜けした。ほとんどの繰り返しを省かずに繰り返していたり、落ち着いた変奏では背中を丸めて注意深く音を鳴らしている様子を見ると、単なるルールブレーカーではなさそうだった。

ただ、何かすごくミスが多かった。と言うか耳に付く。ピアノってそんなものなのだろうか?あと、いつもすごくいい音が出るはずのトリフォニーホールで、目の前にいるのに遠くにいるような感覚がずっと抜けなかった。特に前半はどことなく力が入ってぎこちない感じ。後半の早いパッセージの曲とか、猛スピードなのにドライブ感がないというか、明らかにテンポ設定でむりしすぎでは?という感じ。「ポストグールド」の期待に応えようとしすぎているのか。それで眠くなったのかもしれない。って関係ないか。

アンコールでめちゃくちゃ早い小品を披露したときなんか、リラックスしてとてもいい味出していた。

帰りの廊下では周りの人々の反応は上々で皆満足感が漂っていた。僕が疲れていてうまく耳に入らなかっただけで、実際はすばらしい演奏だったのかもしれない。まあ、とにかく「ゴールドベルグって難しいんだ」ってことだけはつくづくとわかった一夜だった。

今度来たら行くか、と言われると、うーん、と言う感じ。でも今後場慣れして余裕たっぷりにバッハの音楽に客をひきこめる度量が身に付いたころにまた見てみたい。

個人的には久々のコンサートにこのタイミングで行けて良かった気がする。