城山三郎氏

産経ニュース

大学2年の時この本を読んだ。

官僚たちの夏 (新潮文庫)

官僚たちの夏 (新潮文庫)

確かLECかなんかのスクールに説明を聞きに言ったのだった。公務員試験に向けた勉強方法について。場所は梅田の新梅田シティあたりだったろうか。なんだかきれいなビルだった。そのセミナーには参加者が僕一人しかいなかった。子供心にLECも大変だなあと思ったのを覚えてる。

その時に「官僚を目指す人は多いが(当時はバブル後の不況でそこそこ多かったのだ)、官僚の仕事を知る人は少ない。だからこれが参考になります」といって、城山三郎氏の小説を紹介された。

その足でその本を買いに行って読んだ。このことは当時本に金を出すことなんて皆無だった僕にはかなりの快挙だった。その後、国家試験のあらましを理解するにつれ、国Ⅰを受験しようとすると、それなりの準備期間と金が要ることが判明した。当時の僕はへたくそなりにもオーケストラに魅了されていて、一日のほとんどをこのオケの練習に費やしていた。試験準備のためにその練習時間が失われることはかなり苦痛だ。今考えるとバカな優先順位なのかもしれないけど、「試験準備」と「オケの練習」の狭間で当時の僕はかなり真剣に悩んだ。

そんなころ何かの拍子でオケのある先輩に「僕らはいくらうまくなったからと言って所詮プロの音楽家になれるほどにはならない。なのになぜこうして毎日夜中まで練習したり、バイトして楽器を買ったりするんでしょうね」という話をした。学生の時間は有限なのに全然生産的じゃないよね、と。

その人が答えるに「確かに即物的には何も得られないかもしれないけど、こうして好きなことに一日中打ち込める時期って今しかないかもしれない。それに、最後まで行き着いたその先に何があるか見てみたいじゃん」とかいう感じのことを言われた。

僕はなんとなくその答えが気に入った。
なので、今しかできないオケの練習に没頭した。官僚への道はもしかすると今後も機会があるかもしれない、という甘い打算もあった。

10年経った今考えてみると、あながち間違ってもいなかったように思える。なので、今こうして雨風を凌いでブログを書いていられるのもあの先輩のおかげと言えるかもしれない。もちろんあそこでLECに通い始めていたら、また違った楽しみがあったかもしれないけど。

官僚たちの夏」の内容はもう忘れてしまったけど、城山三郎の名を聞いて、ふと当時の記憶がよみがえった。