6000人が作ったシステムは必ず動く

いよいよDay2間近。タイトルがいまいちだけど、この記事には泣くしかない。

6000人が作ったシステムは必ず動く | 日経 xTECH(クロステック)

日経コンピュータ編集委員谷島さんの渾身の一筆。

最盛期の開発要員6000人,開発工数11万人月,投資額2500億円,取引件数1日1億件。三菱東京UFJ銀行が「Day2」と呼ぶ,勘定系システム一本化プロジェクトの成果物である。6000人のシステムズエンジニア(SE)が作り上げた巨大システムは,2008年5月の連休明けに必ず動くはずだ。

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それでも筆者は冒頭に記した通り,この巨大システムは大きなトラブルなく,必ず動くと信じている。IT業界の方やユーザー企業の方から質問される機会があると「何事もなく成功します」と答えている。ITpro読者には釈迦に説法だが,プロジェクトに「必ず動く」という言葉を使うことは本来できない。それは承知の上で「必ず動く」と今回は言い続け,書き続けている。

谷島さんの公演を一度聞いたことがあるけど、記者とは思えないほど地味で朴訥とした印象を持った。その人を持ってこの情熱的な文章というのが驚き。この件に関するメディアの取り扱いがよほど腹に据えかねている模様。

こちらもあわせて読んでおきたい。

第58回:失敗を待つマスメディアの監視下、システム一本化を始める三菱東京UFJ銀行 | 日経 xTECH(クロステック)

このプロジェクトは良くも悪くも00年台を代表するプロジェクトの一つだと思うし、IT業界の需給を思いっきり揺さぶったプロジェクトでもあるので、今後もいろいろと余震が続くんだろう。

とにかく資源を惜しみなくつぎ込む、という金持ち論理的で三菱的な発想はちょっと好きになれないけど、システム統合に奇をてらわず物量作戦で臨むというのは王道だし、システム統合の成功事例として世界に名を轟かせてほしい、と素直に思う。

プロジェクトを通じて得られたPMO関連のノウハウの蓄積はおびただしい量が期待できるんじゃないかと思うし、その応用的な話としてITの工場化とかの試みもあれば面白そう、と傍から見ると思える。同じ芸当をできる会社と言うのはかなり限られそうだけど。

あと、こういう記事がたくさん出て、「いつもと同じサービスを提供し続けるために、その裏でとんでもない数の人が協力して働き続けてるんだ・・・今この瞬間もたくさんのプロジェクトXが続いてるんだ」的な理解が浸透していくと、サービスレベルに対する異常な高品質要求とかシステムトラブルに対する世の中の風当たりとかがじわじわ適正化されていったりしないかなあ・・・と期待したくなる。

畔柳頭取は3月1日付の朝日新聞に、「システムというのは『神のみぞ知る』みたいなところがある。それをできるだけ無くすようにリハーサルを重ねる」と述べていた。

”システムというのは『神のみぞ知る』みたいなところがある”とは、まさにいい得て妙だと思う。経営者でこういう言い方をできると言うのはすごい。だけど、システム関係者以外にとってみれば「システム屋がそれをいっちゃあおしまいよ」と言う話になる。そのギャップを少しずつ小さくできるといいんだけど。

ともかくうまく行ってほしい。