NHKスペシャル『自動車革命』

ちょっと前に2週連続でやっていたNHKスペシャルがクオリティ高かった。ハードカバーの本一冊分くらいの充実感はあった。

NHKスペシャル

詳細はここにあるとおりだけど。

「山寨」としてのスモールハンドレッド | 日経 xTECH(クロステック)

2ヶ月ほど前に新人との勉強会で中国の携帯電話(キャリアではなくハードの方)市場での「山寨(さんさい)」集団について取り上げていたのでなおのこと面白かった。

山寨というのは、政府の手の届かないアングラ市場に出回る商品を作っているメーカーの総称らしく、携帯市場ではすでに一定の存在感になっているらしい。初めはメジャーブランドの模造品や安かろう悪かろう見たいな製品を作る存在だったらしいのだけど、ノウハウを蓄積するにつれて、安さを保ったままそこそこの品質をキープできるようになっているとのこと。中には、製品のサポートネットワークも整備して山寨から卒業して正規のメーカーになった会社もある。

はじめは「途切れ途切れでも話せれば十分」という最も下位層から取り込んで、圧倒的な価格競争力で徐々に上位層に食い込んでいくという、イノベーションのジレンマでいうところの破壊的イノベーションが、中国の携帯市場で今まさに進行中ということらしい。

で、その流れがそのまま自動車にも展開されつつある、という話だけど、映像で見るとすごく説得力があった。官僚達の夏で、ワイシャツの腕をまくってぬかるみから車を押し出していた、ああいう熱気に包まれた若者たちが一杯写っていた。

電気自動車は大きなミニ四駆みたいなものだから、基本構造からしコンポーネント化されている。それぞれのコンポーネントの流通市場が整備されるにつれて、コモディティ化は容易になる。

が、自動車業界でコモディティ化の結果、価格破壊が起きて既存のプレイヤーが淘汰されるのかどうかはちょっとわからない。

  • 安全に対する要求水準の壁をどう乗り越えるのか(前にも考えたけど、乗り越える過程で今と同じようなコスト構造になるのではないか)
  • コモディティ化が進展するとわかっている既存プレイヤー(特に日本のメーカー)が何か策を講じるはず

今のところは、トヨタがハイブリッドシステムをモデルチェンジのたびにより複雑で相互依存的なしくみにしたり、いろんなメーカーが電池メーカと合弁会社を作って囲い込んだりして、「反モジュール化」に必死になっているようだけど、そういうアプローチには限界があると思う。コモディティ化の奔流を止めるのではなくて、そこに適応するアプローチをとるメーカーはないのかなあ。

1兆円のR&D予算を持つトヨタを中国の掘っ立て小屋にあるメーカーが打ち負かす姿は痛快だろうし、見てみたい気もするけど、日本の基幹産業たる自動車産業が崩壊するようなニュースはできれば見ずに済ませたい。