6時。起きた。ぱっと目が覚めた。
どきどきしながら窓を開け、遥か下の渋谷駅あたりの人影を見下ろす。・・・傘を差して動く人影。やっぱり。いつもはずれる天気予報がこんな時ばかりはあたるもんだ。

彼女は一足先にタクシーで式場に向かう。僕も少し遅れて出発。タクシーの窓から確かにぽつりぽつりと振っていることを確認する。

到着するとコーディネーターのお姉さん。残念そうな顔。でもまだ希望はある。土砂降りじゃないだけいつもよりましだ。多少の雨であれば屋外で人前式をやりたい、と希望を告げる。

PCのセットアップとモニターの動作確認。席次の確認。無事終了。

そして着替えた。
やることがなくなった。

早く着すぎたかも。

写真取りますよー。とか声をかけられた気がする。その後、いろんなポーズで写真を撮って、親族紹介があって、写真を撮って、すると立会人の友人が来て式のリハーサルをやって・・・。はっきりいって、このへんよく覚えていない。気づかぬうちに緊張していたのかもしれない。で、いつの間にか皆続々と参加者が登場して式の時間になった。なんとかこの時間までは雨が小雨で持ってくれて、なんとか外で式を挙げることができた。大きな木が一面を覆うような庭だったので、そんなに濡れることもなく苦情もなかった。らしい。式の間はあまり緊張する事柄はない。あらかじめ用意した原稿を二人で読んだらいいだけだし。

でも実際は、入場した時点で彼女が泣き出していたり、フラワーボーイの甥っ子が花びらを力いっぱい投げつけたり、立会人の友人が予定外のハプニングを用意してくれていたりして、いろいろあった。僕は何よりも自分で選んだ選曲がうまくはまるかどうかが一番心配だったけど、そんなの気にする必要ないくらい思いで深い式ができた気がした。


みんなで外で集合写真を取って、披露宴の時間に。

実はこの辺が一番緊張してたかもしれない。口の中が乾いて、普通に歩くのにもぎくしゃくする。なんか変な感じ。披露宴開始早々にウエルカムスピーチなるものがある。こんなの引き受けるんじゃなかったなあ、と後悔。するが、そんなものは先にたたずで、とりあえず早口にならないように気をつけながらゆっくり話そう。口が渇くので飴をなめた。目が泳いで困る。飴がばれないように口の端に寄せてしゃべる。後でビデオ見るのがいやだなあ。その後、主賓のスピーチとかあって写真用にテーブルをぐるぐる回る。いつもならひな壇に群がってくるはずの友人達がおとなしい。イマイチ盛り上がらなくてちょっと焦る。後で聞いたら飲み物がワインしか注がれなかったことが一因らしい。(やっぱりビール瓶がないと注ぎに歩いてきにくいらしい)。ビールもあるよ!ってはじめに言っておけばよかった。

まあ、料理もちゃんと食べてほしいしこういうしっとりした会もいいなあと思い直す。

で、退場。おばあちゃんのエスコートで。

2階に上がると彼女はアテンダントに伴われてそそくさそ控え室へ。お色直しで大忙しだ。僕は、というと放っておかれる。目の前に料理とか運んでこられて、食べててとかいわれる。気がつくと肩がとても痛い。なれないタキシードとサスペンダーで肩が疲れたようだ。サスペンダーをはずしてシャツのボタンも二つくらいはずす。ついでにずぼんも。
個人的にはこの退場後に流れる二人のプロフィールフォトシネマの出来がどうしても気になる。

適当に食べながら待っててねえ。とかいう扱いを受けてることもあってこっそり階段を下りて下の様子を伺う。思えばこのフォトシネマ作るのに一ヶ月くらいかけた。仕事に換算すれば何十万かの価値はあるだろうと思う。あ、一つ目が終わった。拍手はパラパラとまばらな感じ・・・。イマイチやったんかなあ。披露宴やし、やかましい拍手なんてかえって変か、とか思い直す。そうそう、最後のスピーチの原稿を見直さねば。えーと、この話の後にこれがきて・・・その前はなんやったっけ?・・・。まあ、後は口からでまかせでなんとかなるか・・・。この時の僕は何となく強気だった記憶がある。今度はビデオ担当のおじさんにあめをもらっておいた。これで口が渇いても大丈夫。

お色直しも終わって再入場。なんと彼女の後半の衣装は、前半と同じドレスで首や頭にピンクの花びらがまきついたチョーカーだ。歳相応と思ってもらえるだろうか。まあ、心配してもしょうがない。後半は明るく楽しく。入場曲はシンバルズだし。あれ、でも誰も聞いてなさそう。写真とかぱちぱち撮る人はたくさんいるけど音楽聴いてる人はいなさそう。ちょっと残念。まあ、逆よりいいね。友人スピーチで笑いと涙を誘ってデザートブッフェで再びテーブル周りをして・・・。あっという間に大団円となりました。最後に向こうのお父さんのあいさつをいただく。心して聞くべき場所だったけど、僕は自分とネタかぶりしないだろうか、と心配だ。でもさすがに挨拶慣れしているだけあって、うまくまとまっていた。僕もお色直し中の強気を思い出してがんばってしゃべった。気がつくとあれもこれも話したくなって長く話していた。飴をなめるのを忘れた・・・と終わってから気がついた。

自分では普通のつもりでもやっぱり緊張していたみたいだ。相変わらず目は泳いでいた。

そんな感じで二人の式&披露宴は終わった。

宴の最中に雨はひどくなったが、帰る頃には小ぶりになっていた。なんか運気がよくなったのかもしれん。

会場のすべての荷物を撤収して一旦ホテルに帰る。彼女はドレスのまま。トランクにはあふれそうな荷物。セルリアンに着いたら途端にポーターがカーゴを持って寄ってきてすべての荷物を運び出してくれた。なんという心遣い。これがサービスというものなんだ。一旦部屋に入って休むまもなく2次会へ。でも今度は気がらくだ。

結婚式がこんなに楽しい一日なんて思いもよらない収穫だった。