メンデルスゾーン

Paulus (St Paul)

Paulus (St Paul)

この曲。PAULUS。正確にはSt. Paul Oratorioというのだろうか。ニューヨークを旅したときにカーネギーホールで聞いた。ニューヨークフィルだったかどうか覚えてないけど、きっとそうだったと思う。確かマズアが振っていた。当日券を買ったのであまり期待してなかったけど、予想を裏切られる好演で驚いた。基本アメリカの演奏会の客はのりもアメリカンのようで、おばさん達が思い思いに体を揺らしたりビートを刻んだりするのには閉口した。オラトリオを聴きに来てんだから黙って聴け。と言いたかったけど言い負かされるだろうからやめた。黙って聴くのも自由、ノリノリで聴くのも自由。

で演奏自体はなんとも暖かくてオルガンと合唱とオケの重なり具合が絶妙だった。それ以来気になっていた曲だったんだけど、人気がないのか、編成が大きいからか、生で聴ける機会なんてほとんど巡ってきそうにない。こんないい曲なのになぜだろうと思う。年末に第九ばかり演奏するんなら、同じ編成でこの曲をやって欲しいもんだが。

毎年第九のプログラムに飽き飽きした人たちがこぞって聴きにやってくると思うけど。とにかくこんな名曲が埋もれてしまっているのはちょっともったいない気がする。


それにしてもメンデルスゾーンってのは、大学時代とか全然興味なかった。なんというか色合いが平凡と言うか、単色というか、そんなふうに決め付けていた。交響曲で言うとかろうじて5番が最後のコラールの部分とか面白いなって感じで、後はつまんない感じだったんだけど、生でPaulsを聴いた後に他の曲を聞くと不思議とどの曲もすんなり耳に入ってきた。

3番も4番もいいじゃないか。もともと当時の音楽家にはめずらしく家族にも恵まれ幸せに暮らした作曲家だそうで、ブラームスとかシューマンみたいにひねくれた暗い陰もないし、マーラーのような不安定さもない。それ故に素っ気ない面もある。最近になってその素っ気なさの魅力がわかった気がする。ブラームスシューマンの人気の一要素として、彼らの屈折した性格とか病とかがあったりするのであれば、その逆のメンデルスゾーンの魅力もまた、まっすぐ順調な性格にあるのかなと思う。