マッキンゼー ITの本質

本棚から引っ張り出してきて読んだ。

マッキンゼー ITの本質 情報システムを活かした「業務改革」で利益を創出する (The McKinsey anthology)

マッキンゼー ITの本質 情報システムを活かした「業務改革」で利益を創出する (The McKinsey anthology)

マッキンゼーの機関誌みたいなものに掲載されたレポートの寄せ集め集。HBRみたいな感じ。去年まじめに読まなかったんだけど、全体を一つのテーマが貫いているのがわかった。「IT does not matter」と同様のテーマだけど、それよりも前向き。コンサルだからかな?巻末のドイツ銀行のCOOとファストリテイリングのCFO?の人の話が面白い。CIO不要論、というか、今のCIOの定義だと責任範囲が狭すぎて効果が上がらない、というのが共通したメッセージ。事業にイノベーションを起すのが本来の目的なのに、システムサイドからのアプローチでそれができるわけないでしょ、という感じ。

ドイツ銀行の話の方は、内容が薄っぺらくて、「本当にそれだけでうまく行ったの?」という疑問だらけ。何で苦労したのか、湧き上がる抵抗勢力との戦いぶりとか、全部割愛されてしまっていて、単なるセールストーク

ユニクロの人の方の指摘で、「業務改革の方法を考える→システム化。じゃなくて、業務改革の方法を考える→試しにやってみる!→うまく行ったらそのしくみをシステム化」というのが印象的だった。「試しにやってみる」フェーズが必ず必要だと。そのフェーズには経営陣の参画は必要だけど別にコンピュータ屋は不要でしょ、と。

例えば新しいシステムを作るときに「狙った効果が本当に出るのだろうか?使われるシステムになるのだろうか?」というリスクがつきまとって、「じゃあ、そのリスクって誰が取るんだろ」というのをいつも考えていた。「そのためにパイロット」とか「プロトタイピング」とかいろいろあるんだけど、システム部じゃなくって、まずは業務やってる人たちが「(例えばExcelとかで)試しにやってみる」ってのは、大きな会社でも有効な気がする。まあ、実際のシステムできてから「あれ?Excelの方が使い勝手良かったな」見たいな話もよくあるけど。

とにかく全章を通して「IT投資を行うにあたっては、ITの専門家ではなく、業務の専門家を巻き込むのがすごく大事、で、それを以下に巻き込むか」というメッセージが詰まった本。

コモディティ化の続き

午後は先週やってたコモディティ化の続き。見直してみると定義とか、原因とかが結構いい加減。もう一度考え直す。その後、サービス部門のコモディティ化の事例探し。

あさってみると、ITベンダーで言うとSUNがこの分野でかなり攻撃的。

http://www.computerworld.jp/news/sw/20302.html

とか。

ただ、彼らの考え方の根本にある「コモディティ化=勝機」の「コモディティ化」の定義にすごく違和感を感じる。

こことか。
日本オラクル | Integrated Cloud Applications and Platform Services


勝手に引用すると

モバイル業者は携帯電話機を無償で顧客に配布しますが、これは携帯電話機の価格がゼロであるという価格破壊を意味します。このような価格破壊が許される理由は、通話契約の獲得が期待できるためです。同様の論理をデータセンターにも適用できないでしょうか?ネットワークとネットワーク・サービスが到達する先にはコンピュータがあります。コンピュータは単にネットワーク機器です。そうであるならば、サンが持つすべてのテクノロジーを駆使し、顧客に対して次のように提案できるはずです。「サンのオペレーティング・システムを使用する契約に署名していただけるならば、サンは HP の提示する価格の半額で、この最高速の Opteron サーバを提供いたします。」サンのこのような販売戦略に対して HP は対抗できないでしょう。これにより、競争上の大きな優位が得られます。

「これにより、競争上の大きな優位が得られます」って、競争優位性が失われるからコモディティ化なんだから、競争優位につながるんだったらコモディティ化してないのでは?という感じ。


さすがNRI

あと、さすが日本の名だたるシンクタンク、とうなり声を上げたのがNRI。「コモディティ化」を扱った論文だけで25文書も公開されている。太っ腹!でも今年の分は非公開なのね・・・

NRI 野村総合研究所

周回遅れだったのか

全体を通して、金融サービスの分野では、特に下層部分(利益率が低い)から、コモディティ化が進展している、もしくはその脅威を感じている、というのは共通認識になりつつあるのかな?という印象。地球は僕より1周くらい早く回っていたらしい。

ただ、そのメカニズムが系統立った形で示されるところまではいっていない。なんとなく、製品のコモディティ化のアナロジーとして「サービスも同じしくみで競争優位が消失している」「参入障壁が下がると価格激化する」という現象面を中心として「金融サービスにもコモディティ化」という認識に至っているような気がする。(ホントか?)

だとすると、もう少し深掘りしてコモディティ化のシステムと脱コモディティ化の方法論を考えると言うのは、有効に違いない、と思いたい。


で、思ったのが、「もう一度クリステンセンを読んでみようということ」。あと、どうやら「脱コモディティ化」の保守本流は「イノベーションの継続」で決まりらしい。ふむふむ、何か点と点がつながってきたぞ。