お客さんとの競争に勝つ

今日人の話を聞いていて思った。サービス産業ってのは進化しているよね、それって恐ろしいよね、という話があちこちで聞くし、自分もそういう話をする。進化につい怯えてしまうのは、それによって自分の食い扶持がなくなるからだろうと思う。立ち止まっていると、自分の能力はコモディティ化の渦に飲み込まれてしまう。そのスピードも以前よりはやい。だけど、立ち止まっているわけではなく、それなりに新しいことを吸収していても、自分の価値はどんどん目減りしていくようだ。

原因は、お客さんがプロ化してることだろう。家電やパソコンみたいな分野の消費者向け製品の世界だけではない。あらゆるサービスの世界で、今まで顧客の座に甘んじて業者との情報格差ゆえにひれ伏していた人々が、業者並みに競争力を持ちはじめている。それどころか、企業の世界でも顧客のプロ化が進む。事業戦略を立てましょう、とかサプライチェーンを導入しましょう、とか言う時は、とりあえず外部の専門家に計画立案をお願いする、という流れが、MBAホルダーなんて社内にごろごろしてますけど、何か?という世界になりつつあるようだ。

こちらが普通に新しいことを吸収したとしても、お客さんもそれと同じくらいは勉強している。しかも向こうには事業会社を運営する、というプレッシャーがある。机上の空論を並べるコンサルとは箔が違うと言う感じだ。なので、普通に新しいことを吸収しているだけでは、いつの間にか自分の能力はコモディティ化してしまう。え、そんなの自社の若手でも考え付きますが、何か?といわれてしまう。このままでは、昔ながらの同業者に負ける前に、お客さんに負けてしまいそうだ。

お客さんとの競争に勝て、だなんて、サービス業に身を置く立場としては本末転倒もはなはだしい。そもそもお客さんの成功によってお金をもらう仕事だから。だけど、入り口でお客さんに負けているようじゃあ、そもそも仕事にありつけない。だからまずはお客さんに負けない。もしくはお客さんと勝負しないでいいように持っていく。戦わずして勝つはこれ上の上なり。

お客さんの2,3歩先を歩け。という昔からの金言は、昔の「あまり進みすぎるなよ」という意味から「追いつかれないようにもっと早く進め」という意味に変わりつつ、今日も有効であり続ける。しかし、その金言の難易度が急速に高まっている気がする今日この頃。