戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際

その筋の古典といわれている本

戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際

戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際

古典といわれている割には売れ行きはもう一つらしく発売後10年を経て未だに1刷。だからこそ古典なのかもしれないが。

内容は、経営戦略の原論的位置づけ。ハイレベルな戦略から個別戦略までの関係を位置付けたり、戦略という言葉の定義から必要条件、十分条件を導き出したりしていて、さすがに天才はだな作者だけあって、ロジックが立て板に水の如く展開されている。(昨年「プロフェッショナル原論 (ちくま新書)」というのを出してそれなりに売れてもいる。)

PPMやポーターやアンゾフやコトラーとかのフレームワークは、さらっとさらっている程度で、それぞれどんな目的で使うかとか、それぞれの関係(各フレームワークが補完的存在だとか)というのをわかりやすくまとめていて、こういう点はすばらしい。

後半で戦略立案の具体事例をステップバイステップで紹介してあったりもする。が、この辺は、まあ好みの問題とかあるのかな、というか自分で頭を悩ませる世界な気もした。

ちょっとびっくりしたのが、アンゾフの言うところの新規セグメントに参入するという時の例で「ビジネス用途だったポケベルを若者のコミュニケーション向けに提案する」という部分。ポケベルなつかしー。っていうか、なんて時代錯誤な・・・と思ったが、この本が書かれたのは1995年。僕が大学に入った年。そうかあ。確かにあのころはポケベルが普及したての頃だったんだ。当時まだケイタイなんて肩からぶら下げて歩くようなのしかなかったんだった。ってことを思い出した。

で、大学2年くらいの時にPHSが流行ったんだ。「ポケベルの基本料と大差ないし、今なら3ヶ月ただだよ。」と大学の構内で怪しいおじさんに勧められて、つい契約してしまった。DDIポケットだったっけ?が、初月からきっちり料金とられて「おいおい、おかしいじゃないか」と思って連絡先に電話したら、わけのわからないおばあさんが出て話がまったく通じない・・・。とかいう目にあったこととかを思い出した。今思えばあのおっさんは後の光通信系の走りだったのかもしれないし、もしかしたらばあさんもぐるだったのかもしれない。まあ、大してだまされたわけじゃないし、確かにPHSってのは便利だったのでよしとしよう。当時のケイタイビジネスは光通信系が牛耳る前のケイタイ勃興期で、業者側もユーザー側も「なんか面白いこと始まるかも・・・」というわくわく感があった気がする。いや、気がするだけかもしれない。というくらい昔のことに思えてしまう。

そうか、たった10年前だったのか。「失われた10年」とかいって勝手に「世の中全体が灰色だった頃」みたいに扱われているけど、あのころはあのころで、それなりに夢も希望もあったんだよ(今もあるが)、と思い出させてくれた一冊でもある。