ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第31番、第32番 ギュラー
今年はベートーヴェンの年(個人的に)。後期ピアノソナタ。聴いたことなかったし、タワーで安かったから買ったんだけど。
- アーティスト: ギュラー(ユーラ),ベートーヴェン
- 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
- 発売日: 1994/01/25
- メディア: CD
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ヨウラ・ギュラーという女性ピアニストの晩年の録音とのこと。聴いた限り女性の演奏とは思わなかった。
ピアノ・ソナタ第31番、第32番 ギュラー(p) : ベートーヴェン(1770-1827) | HMV&BOOKS online - 2564698998
とかを読むと、こちらが気後れするほどの名盤だったらしい・・・。知らぬが仏。
31番の最後の長大で果てしないフーガが特に美しい。
ピアノソナタ第31番 (ベートーヴェン) - Wikipedia
ベートーヴェン自らが引導を渡したはずの古典派の、そのまた前の時代の古めかしい技法を引っ張り出してきて、ものの見事に新鮮な息吹を加えて蘇らせている。晩年の弦楽四重奏のフーガのような威勢の良さとはまた違った枯淡の境地のような趣を感じる。
この演奏のピアノの音色も好きだ。ピアノのことは良くわからないので、楽器の特性なのか、演奏者の特性なのか不明だけど、余計な響きが取り除かれた生なピアノの音がする。オルガンを聴くのに似ている。グールドほどのぶっきらぼうさはないけど、何かそれに近い種類の音に聞こえる。
32番はやはり二楽章。なにこれベートーヴェンなの?という感じのチャレンジングな曲。
ピアノソナタ第32番 (ベートーヴェン) - Wikipedia
冒頭の主題は、この世の去り際のテーマとでも言えるくらいに穏やかなフレーズなのに、変奏曲の途中からスィングしまくってる。一瞬演奏家がトリッキーなのか??と思ってしまったけど、どうやらこういう曲らしい。ニューオリンズのビートが19世紀の遠いボヘミアの大地に届いたんじゃないかと思うくらい。
いずれにしてもこの2曲が1200円というのは安い。いや、安すぎるぞ!
ちなみにこの世の去り際を思わせる2楽章の冒頭のテーマは、Mondo Grossoの「下校のテーマ(1974 -WAY HOME)」を思わせるものがあった。
- アーティスト: MONDO GROSSO,大沢伸一
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ
- 発売日: 2000/07/26
- メディア: CD
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それにしてもこの作曲家の懐の深さを再発見させられた二曲だった。枯淡とか諦観とかってブラームスの専売特許なんだとばかり思っていたけど、ブラームスほど辛気臭くならずに、晩年の心の広々としたありようが描き尽くされている。
しかも最後までチャレンジャーだった。普通最後に書くピアノソナタだったら自分の集大成的な無難な曲にするでしょ。自分が完成させたソナタ形式をあえて使わずに、フーガを復興させてみたり、トリッキーなスィングを試してみたりして、どんだけ探究心旺盛なんだろう。
やっぱ厳格でいかめしいベートーヴェンは後世が作ったイメージで、実際はやんちゃで異端な男だったのかもしれない。