自動車革命の話

先日のNHKスペシャルの余韻でいろいろと話が弾んでいる模様。

山東省製「13万円の電気自動車」に反応したメモ:インフラコモンズ今泉の多方面ブログ:オルタナティブ・ブログ

中でも

みんな簡単に自動車製造に参入できるように言ってくれるが、それは、自作でPCが組み立てられたらサーバーメーカーになれる、っていうのと同じでは?:「愛」を「知る」:オルタナティブ・ブログ

でも、自動車製造って、動力部分だけが勝負なんですかね?

・衝突安全基準を満たすボディーは?
・地面との接地面から含め、運転者がきちんと操舵できる機能は?
・ボディーのプレスや動力部分以外の組み付け、塗装等を行う生産設備に対する投資やそれを効率に行うための生産技術は?
・モーターも内製するの?生産効率は?
・(日本だけかもしれませんが)型式認定・指定類別番号を取るための認証は?
・アフターサービスは?

という指摘は至極全うだと思う。

電池周りの製造コストが下がっても、今のアイミーブみたいな車が300万→100万で売られるくらいにはなるとしても、50万とか30万の新興メーカーの車が日本ですぐに受け入れられる事態にはならないと思う。安全性や快適性とか「今の日本の」評価軸で見る限り、既存メーカーには一日の長があるし、同じレベルを満たすには同じようなコスト構造の事業モデルになるだろうから。

Nスペのスモールハンドレッドが作る車は、今の日本の評価軸では箸にも棒にもかからない粗悪な製品には違いない。だけど、「それで十分」と評価するユーザーもいる。しかも大勢いる。彼らの評価軸は人力や馬車以外で移動できるか、雨の日にぬれずにすむか、という軸。時速40キロしか出ない車に乗るのであれば安全性能にそれほど気を使う必要はないし、道路もまともにない場所では登記云々も気にする必要はない。

格安の電気自動車メーカーが目指すべきはこうした「ないよりはまし」という評価軸を持った市場であって、既存メーカーの買収で安全性や先進国向けマーケティングを身に着けたりすることではないだろう。今の段階でそんなことをしようものなら、たちまち既存メーカーと同じ高コスト体質になってしまうんじゃないかと思う。逆にそうなってくれると日本の自動車産業としては脅威を取り去ることにはなるけど。

ネクストマーケットによると、世界のピラミッドの一番下の層(1日2ドル以下で生活する人々)は40億人いるそうで、これよりちょっと上の層であれば10数万円の自動車はがんばれば手が届く水準になる。今の自動車業界が見向きもしていないこうした人々に対して、今までの概念とは違った生活の道具としての自動車を提供し続けることで、ノウハウを蓄積していくと、既存メーカーにとっては大きな脅威になるんじゃないかと思う。