日経新聞電子版

日経新聞電子版というのができるらしく、入れ入れと、新聞でもテレビでもWebでもメールでもうるさく勧誘している。

日本経済新聞 電子版

ようは、「情報はタダではない、特に記者が足で稼いだ良質な情報には正当な対価を払っていただく」という至極最もな考え方に基づいた判断だと思う。後、紙媒体の広告料が細ってきて赤字なので何とかしたい、というのもあるか。

WSJもFTもネットで有料会員制にしているとか、シカゴの何たら新聞は紙をやめてネット一本に絞ったとか、日経の朝刊で度々紹介されていて、日本にもその流れを根付かせたいという思いはわかる。

経済記事では他社の追随を許さない層の厚さと知名度を持つ日経新聞だからこそネット版の有料化に踏み切れているというのもある。他紙だと一瞬でスイッチされて終わりだろう。

だとしても、ネットで提供する情報に課金するというハードルはとても高そうに思える。先行事例でも収益は紙媒体の10分の1というし、そもそも有料会員を集めるには相当の時間と努力が必要だろう。

いつ無料版がなくなるか

現時点では無料の日経ネットの記事はいままでとほぼ同様に閲覧できているし、無料版のRSSも今までどおり飛んでくる。ただ、このままだと「金払ってみるか」という気にはならず、有料会員は増えないので、どこかのタイミングで無料閲覧に制限がかかるのだろう。これは既定路線だと思う。

そうなった時どうするか。月1000円払って今までと同じ情報を得るだろうか。無料の他の情報源にスイッチするだろうか。考えてみたけど、日経ネットだけならわざわざお金払おうとは思わないな。

日経BPが持っている「Tech-On!」とか「NBオンライン」とかまで無料じゃ読めません、ということになれば考えるかもな。Tech-Onとかは、金払っても満足できるコンテンツだと思うので、これなら納得して金払うかも。(月1000円かどうかはともかく。)

そもそも無料版をなくしたり制限したりすると、有料会員は増えるかもしれないけど、広告メディアとしての収益は悪化したり、マインドシェアが落ちたりネガティブなインパクトも大きい。NIKKEI NETの広告収入がどのくらいあるのか知らないけど、月数億円のレベルとして、それを有料会員の料金で賄うには、数十万単位の会員が必要になる。新たな収益源とするには、そこからさらに会員を上積みする必要があるわけで、道程は相当険しいと思える。100万人集まったとして月10億の売上で本体の売上の10分の1以下だ。

ただ、日経新聞社がこれだけ大々的にぶち上げているということは、不退転の決意の現われと思うので、ネットでの情報課金にせいぜい取り組んで欲しい(皮肉ではなく)。

万が一この取り組みがうまく行って、日本のネットの世界で「情報はタダではない」意識が広まるようなことが起こると、日経が日本のネットコンテンツビジネスを建て直した、と後世まで語り継がれるんじゃないだろうか。