トラブルシューティング

福島の原発は、電源回復→冷却機能回復による早期の終結という先週時点の楽観シナリオは潰え、少なくともあと1ヶ月程度は収束に向けた結末が見えない展開と考えたほうがよさそう。門外漢なので何の役にも立たないのが歯がゆい。

地震津波が想定外という段階を超えて、電源喪失によって原子炉の動き自体をコントロールすることはおろか、何がどうなっているのか、これからどうなるのかさえ想定できない状態になっている。

何かを隠しているのでは?とか、正確な情報が知らされないとかいう話が多いけど、まずは問題の根源を収束させることにフォーカスすべき。

世界が震撼!原発ショック悠長な初動が呼んだ危機的事態国主導で進む東電解体への序章 | Close-Up Enterprise | ダイヤモンド・オンライン

の記事が正確なのであれば、最前線の現場指揮官は信頼できる方のよう。

福島第1原発の現場責任者は、吉田昌郎執行役員発電所長である。その陣頭指揮は光っていたようだ。「吉田所長は勇敢で現実的だった」と政府関係者は言う。

「放水作業のなか電線工事をすることは作業員の安全を確保できるものではなかった。何が起こるかわからないからだ。本店と現地は何時間も議論した。本店は『自衛隊の放水は止めてもらえ』とまでなった。だが吉田所長が『やる』と判断した」

現場の指揮官が機能しているのであれば、現場判断である程度の対応を取れる裁量を与えてほしい。これまで経験したことがないトラブルへの対処なのだから、現場レベルでは当然トライアンドエラーの連続になる。それを許さない状況であれば(現場と本部の関係は往々にしてそうなってしまうが)、必要なタイミングで必要な手立てが打てなくなってしまう。

東京の外野がやるべきことは、事態収束に向けた方向性を定めることと、実行に向けて彼らが存分に動きやすい環境を作ること(基本方針の伝達、物資調達、技術支援、広報活動)に専念すべき。

最早2,3日で何かが解決する段階ではなくなった以上、ある程度腰をすえてやるほうがよい。何をどの順番でやって原子炉を抑え込むかという、今後1ヶ月程度の工程表を作って、それを全員が共有した上で、事に当たれば、当事者も周辺の方々も、僕らのような外野も予実の把握ができるし、あらぬ疑念の余地もなくなる。

もちろん、「何がどうなっているのかすらわからない」状態なので、工程表の計画通りにことが運ぶとは限らないけど、当事者の意図を共有することだけでも意味があるし、詳細不明な中でも事柄の蓋然性とその対処法を考えれば、自ずと計画の選択肢は絞り込めるんじゃないかと思う。(僕自身は想像できないが)

特に、事態収束に向けて、今のような対処療法ではない思い切った処置をする場合、その時に備えた周辺の安全確保は外野がやっておくべきこと。

退避区域を30キロ→50キロに広げると、郡山、福島、いわきという30万都市がいくつも対象となる。(政府が退避範囲を広げない理由はここにあるような気がしているが。)彼らが一度に退避しようとすれば、それこそパニックになる。100万人が一度に移動する手段など持ち合わせていないし、移動する先はどこだ、何ヶ月滞在するのか、と言う話もある。福島の方々の生活と仕事を一時的とはいえ、すべて移動させることの難易度は想像を絶するものがある。工程表を共有する段階で、周知・避難までのリードタイムを作るのは当然として、相当な準備と合意形成の取り組みが必要になる。

福島には仕事でもお世話になった方がいる。去年の秋には家族で旅もした。危機的状況が1ヶ月続くという稀に見る事態を、どうすれば乗り越えられるのか。自分にできることが何かないか考えたい。