~経営戦略の実効性を高める~ 情報システム計画の立て方・活かし方
~経営戦略の実効性を高める~ 情報システム計画の立て方・活かし方
- 作者: 柴崎知己
- 出版社/メーカー: かんき出版
- 発売日: 2005/09
- メディア: 単行本
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あんこたっぷり鯛焼き風味
まず、タイトルが良い。すがすがしいくらいに地味で華がない。華がない代わりに中にたっぷりアンが入っている。鯛焼きのようなタイトル。こんなタイトルで正直売れるんでしょうか、と心配になってしまう。
で、その鯛焼きのようなポリシーは内容にも貫かれている。カッコイイxx理論とか出てこない。その代わりに「こんなにネタばらししてもいいんでしょうか。」と思うほど業務改革の方法がステップバイステップで噛み砕かれている。
そのオープンな精神にまずは脱帽。
chief innovation officer
で、メッセージとしては「CIOのIって"Information"じゃなくて"Innovation"だよね」というもの。あら、普通です。この間呼んだマッキンゼーの寄せ集め本と同じメッセージ。
マッキンゼー ITの本質 情報システムを活かした「業務改革」で利益を創出する (The McKinsey anthology)
- 作者: 横浜信一,萩平和巳,金平直人,大隈健史,琴坂将広,鈴木立哉
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2005/03/04
- メディア: 単行本
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ただ、「斯くあるべし」で終わっていないのが違い。「情報システム部長」とか「システム統括部」とかでは、中途半端な権限しかなくて、ついつい視野が内向的でシステムありきの考え方になってしまうよね、というのは、もはや誰もが頭ではわかっていて、さんざんに指摘されている。そういう視点でシステムが作られるから、当初狙った効果が出ないし、そもそも効果の算出さえできていない、と。こういう主張は巷にあふれかえっている。ただ、大切なのは「わかっているのに、それでもその枠組みから抜け出せていない」という現状。
そのための解決策がここに書かれている、というわけで。
この本の主張としては、めちゃくちゃ端折ると「業務改革の検討プロジェクト長をCIOが進んで引き受けなさい。そうして経営トップの意向を汲んだシステムを作りなさい」という点に行き着いて、その方法を細かに記載している。根底には著者の「IT部門を会社の中枢部門として位置づけたいんだ」という暖かい思いがあるように思える。確かに私の知っている範囲だけ考えても、IT部門がそのほかの花形部門と同等に扱われているようには見えない。単なるコストセンターだ。著者が巻末に書いていたIT部門を「コストセンター」から「イノベーションセンター」に!というメッセージで、(恐らくは一緒に辛酸をなめてきたのであろう)IT部門に愛のメッセージを送っているように感じた。
内容
で、こうしろといっている
- 経営計画に関するバランススコアカードの作成
- 重点的に実施する施策の立案
- 情報システム要件立案
- 情報システム構成立案
- 全体計画立案
お前ら3.から始めてるからダメなんだよ。ということ。1.2.をやらないとコストセンターのままだよ。と。
で、1.から5.までに
- どうやって検討を進めるべきか
- どんなアウトプットを作成すべきか(報告用、検討用)
- どんな点に注意が必要か
という、いわゆるノウハウ的な部分をネタ晴らししているのです。これがすごい。APIを公開したWeb2.0企業のようだ。情報は外に出すもの。コンサル2.0というやつでしょうか?
懸念
確かにその通り。とは思うんだけど、じゃあ、
- 今のCIOとか情報システム部門の人が1.2.の世界に入り込むにはどうするんだろ。(一体なんといって手を挙げるのか)
- 情報システム部門の要員に1.2.のケイパビリティがあるのか
- 1.2.の結果、ITによる解決部分がすごく小さかったらどうするのか(その時点で手を引くのか、最後までやるのか)
という部分に自分の中で答えが出なかった。恐らくCEOが指名すればいいんだろう。お前、システムの殻に閉じこもってないでこれやれ、と。そうじゃないと自分で手を挙げるリスクってめちゃくちゃ高そう。
あとはケイパビリティ。IT部門とユーザー部門の調整なら経験があるから何とかなる。事業部門と人事の調整にもCIOが割って入る必要がある。果たして社内的にそういった立ち回りをうまくこなせるか。果たしてその役目はCIOが最も得意としていることなのか?(自分に強みがないことはやらないほうが組織から見て全体最適に適う)
システムの出番少なそうです。中途採用の強化で8割の効果が出ますから。となった時にどうやって撤収するのか、それでもやり通すのか。はたまた、はじめから「システムに落っこちてきそうだな」という読みを持って手を挙げなさい。と言うことなのか。
と、僕の頭の回転では追いつけない部分もあるけど、とにかくこんだけのアウトプットサンプルと考え方のまとめを参考にできるだけで買った意味あり。できればWebで公開して欲しいが、それはさすがにできない相談か。知のコモディティ化。