華麗なる一族

華麗なる一族(上) (新潮文庫)

華麗なる一族(上) (新潮文庫)

読んでいる。この本を。ブームに乗せられて。
今下巻の中盤に差しかかって一気にストーリー展開がスピードアップしている山場。しかしここまで読むのがしんどかった。山崎豊子の他の作品と同様に、やたらに修飾語というか形容詞が多いので読んでいて疲れる。白い巨塔大地の子もそうだった。今回は華麗というタイトルがあるので、なおさら煌びやかで絢爛豪華な修飾語のオンパレードの感あり。そういう意味では映像としては映える作品なのかもしれない。

あと、人物描写があまりにもステレオタイプ的というか表面的過ぎる気がする。正義漢(万表鉄平)はいつでもどこでも正義感に満ちていすぎるし、こめつきばったみたいな人物はいつもねそっとした口ぶりで、皮肉屋はいつでもアイロニーに満ちている。わかりやすくはあるんだけど、本を三冊も読む頃にはいい加減うんざりして来る感あり。

それでもさすがは巨匠だけあって、話の筋は重厚だし、期待も失望も憤りもいつの間にか自分が共感してしまっていたりする。昭和40年代とはいえ、銀行を中心として展開する話というのも面白い。どぶ板の預金集めも人情味あふれる融資も、行内派閥の争いもお上への平身低頭ぶりも、時代は変われど本質の部分は今も残っている。と思う。

むしろ今は薄れてきつつあるそういった銀行の慣習が、かつてはどんな姿だったのだろうか、ということをわかりやすく面白おかしく書いてくれていてとても参考になる。

キムタク演じる万表鉄平のまっしぐらな生き様とそれが報われない情景を読んで、なんとなくブルックナーの5番が頭の中を流れ続けた。4楽章の終盤のコーダで霧に包まれた灘浜の朝の中にまだ見ぬ高炉が忽然と姿を現して、高々とそびえ立っていく・・・。

万表特殊鋼に敬意を表して大阪の誇り朝比奈隆ブルックナー