マンション業界の売り手と買い手の関係


連休の前半にマンションの契約してきた。重要事項説明と管理規約のとこで何点か難癖をつけているうちに、他の家族は帰ってしまって、気が付いたら僕らだけ残されていた。

とりあえずこちらもこじらせるつもりはなかったので、サインはしてきたけど、なんか説明の体制とか内容がいまいち。こちらが聴いたことに応えるのに何十分もかかっているし。

そもそも、こういう契約って一発の説明会だけで終わるようなものではない気がする・・・。こういう気分は以前にも経験していて、結婚式の式場とのやりとりもそうだった。車を買うときにも似ているかもしれない。

どちらも売り手と買い手の情報の非対称性のきわめて高い業種だし、一生に何度も経験するものじゃないだけに、一時的に買い手が不満に思ってもそれが売り手にインパクトを与える機会は少ない。

ただ、こういう力関係は、ネットが普及するにつれて徐々に薄れつつある。

家電の世界では、かつての「標準価格」と「仕切値」を巡る値切り交渉がほぼ消滅して、買い手がkakaku.comを印刷して業界最安値を売り手に要求する風景が当たり前になった。

自動車の場合は、未だにディーラーで売り手と買い手が相対で価格交渉に挑んではいるけど、carviewとかkakaku.comとか数多の掲示板で各車の詳細な情報や値引き事例の紹介が広がっていて、交渉自体の主導権が買い手側に移ってきている。


が、マンションとか住まいの業界というのは、情報の非対称性が未だに大きいままだ。

理由の一つは、家電や自動車と違い、同じものが2つとない。ということ。住まいというのは、どこかの地面に立っている以上、立地条件や周辺環境が建物ごとに違ってしまう。同じデベロッパーの同じシリーズものであれば上物の規格自体は同じで比較対照にしやすいが、立地や環境、土地の出自など比較を困難にする要素が多すぎて、例えばクラウンの情報を集めたり、アクオス37型の情報を集めるよりもかなり情報集めが難しくなる。

もう一つは、住まいの購入という行為自体が一生に何度かしかないということ。車や家電と違い、買う人も少ないし買う頻度も少ない。買い手同士で情報を提供しあう場合の母数が小さくなってしまう。

あとは、新築の場合、売り手が一社しかいないということ。家電にしろ、自動車にしろ、製販がある程度分離されていて、販同士でも競争がある。なので、販売会社のほうから「うちで買ってくれたらこの値段」という情報を提供してもらうことができている。情報の非対称性で有名だった金融業界でも、いまでは預金金利や融資金利のヒートコンペが繰り広げられている。

これらの理由から、住まいの売買に関する売り手と買い手の情報の非対称性は維持され続けている。

言い換えると、買い手が住まいの情報を生産するのに必要なコストが非常に高い状態が続いている。
買い手の情報生産コストを下げない限り、情報の非対称性は緩和されない。家電の最安値を調べようと思うのは、それを一目で把握できるサイトがあるからで、数日かけて各店の価格を自分で比較しないと最安値がわからないようであれば、現在のような買い手優位の市場にはなっていないだろう。情報を調べるコストが充分に低いからこそ、格差が縮まる。

例えばマンションにも情報比較のサイトがあって、それなりににぎわってはいる。

が、やはり上の3つの理由が相まって、買い手が必要な情報を調べて、売り手と対等になるには道のりが険しそうに思う。

  • 単純比較が難しい(価格が一戸単位で異なる。他のマンションでの情報がほとんど役立たない。)
  • 書き込み内容がかなり主観的、というか感情的(荒らし系か礼賛系がほとんど。情報提供という視点は薄い)
  • 情報の再生産が難しい(新しいマンションができると、またゼロから情報を集めないといけない。経験曲線が利かない)
  • そもそも必要な情報が売り手に囲われている(重説を読まないと詳細がわからないので相当後半のフェーズでしか情報が出ない)

解決策としては、それなりの目利き能力を持った人が客観的な指標を使って比較するサイトが必要かと。
できればデベロッパー側が情報提供を競うような状態になるとうれしいんだが。kakaku.comさん。頼みます。

そもそもかなりの売り手市場(売り出せば完売してしまう)の現状では夢物語なのか。