ノンリコースローン
日経ビジネスに面白い記事があった。日本の住宅ローンがノンリコースではないのでいろんな問題を産んでいるのではないか、と言う話。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20090106/181924/
日本では、ローン残高以下に市場価格が下がっても、ローンを最後まで返済するのは、自己破産しない限り、致し方ありません。一方、米国では、ローン残高よりも住宅価値が下がると、「騙されたと感じる」ということです。このようなノンリコースで住宅金融が組まれている事実を前提に考えないと、米国の「サブプライムローン」問題についての本質を見誤ってしまいます。
米国では、「サブプライムローン」であってもノンリコースが前提で契約されている限り、日本の住宅ローンシステムと比較すると、はるかに「消費者保護」の立場にたって運営されてきました。
米国の住宅ローンはノンリコース(有限責任)なので、返済に困ったら家を手放す(銀行に差し押さえられる)だけで、ローンもちゃらになる。日本の住宅ローンの場合、返済に困って家を売り払っても売却額が融資残高に満たなければ、その分の返済義務は債務者に残る。(銀行は貸した後の住宅価格がいくら下がろうとも困らないしくみになっている。)
だから
- 銀行は返済能力(年収、勤務先)のみに着目して住宅の担保価値を重視しない→返済できる額が購入する額の目安になる→住宅価格が客が返せる額を基準に決まってしまいがち
- 「住宅はいつか売るものだ」と言う発想がなじみにくい→家の資産価値を保とうというインセンティブが働きにくい
みたいな話。
記事自体にはいろいろ論理の飛躍がある。ノンリコースが決して万能なわけではないし、実際アメリカの住宅金融会社としてはノンリコースであったがために、リスクを再分化して住宅ローンを証券化しようという意図が働いたわけでいろいろと問題を抱えたわけだし。ここ数年のアメリカのシラー指数の急騰と急降下振りは日本のバブル前後のそれと同じ状況であって、ノンリコースにすれば住宅の価格が適正化するのだ、とかいう話はおかしい。
ただ、個人的にもノンリコースの住宅ローン借りたいな、と言うのは前から思っていたし、住宅を買う側からすれば、それが当たり前だろうというのもある。
どこか忘れたけど、日本の金融機関でも個人向けにノンリコースを扱っている金融機関があった。アパートローン的な位置づけだったと思う。
けど、当時も調べたけど、やっぱり今の状態だといろいろと難しい。
http://loan.preseek.info/info/c060927.html
1.通常のローンよりも金利が高い
※変動基準金利+2〜3%程度
2.自己資金がかなり必要
※不動産取得諸費用+融資諸費用+鑑定費用=10〜20%
※収益還元法による査定のため、購入価格との差額
3.不動産管理などは金融機関指定会社の利用が強制される場合も
※言い値の管理費や集金代行手数料が引かれる
4.留保金(預け入れ金)が必要
※税金や修繕費の積み立てや預け入れが強制される場合も
5.返済期間が短いケースも
※再融資審査もあるが、貸してくれる保証はない
担保価値を収益還元法で見るというところが一番ネックになりそう。今の金融機関には評価する能力はないので、アメリカ式に分業体制を敷く必要がある。さらに、地方の一軒家とかの場合、市場価格のデータ蓄積がなさすぎてとんでもない金利になるような気もする。
逆に、住宅価格が賃貸に出した時の収益(市場価格)を持って決まるようになるから、中古市場の透明性は上がってくるだろうなとは思う。
あと、日本特有の事情として、「購入金額のほとんどが土地を所有する対価である」と言う点がある。この部分を緩和する策として、土地部分のみをノンリコースとする案はどうかなと思う。土地部分に関して、返済期間100年くらいの返済期間のローンを組む。住宅売却時に、土地部分のローン残高も負債としてセットで付いて来るしくみにして、次に住む人が残存期間のローンを引き継ぐ。マンションの売買の時も同様で、上物1000万の中古マンションを買った買い手は、土地部分の100年ローンも引き継ぐ。今よりも数割安く住宅を取引できるようになるはず。
まあ、この話を突き詰めると、土地を政府が買い上げてしまえという、司馬遼太郎的な発想になってしまって思考が停止するんだけど。