薄型テレビ読み比べ

面白い比較。
薄型テレビ市場で垂直統合路線をひた走る2社。シャープとパナソニックの決算発表記事を読んでみた。どちらも来年前半に新工場を予定している。(シャープは堺に液晶工場、パナは尼崎にプラズマ、姫路に液晶工場)

「堺工場は予定通り立ち上げる」シャープ決算発表の質疑応答から《訂正あり》 | 日経 xTECH(クロステック)

まず景気見通し。

現在の景気悪化が継続すると予想して厳しく算出した。2008年12月に景気が底を打ったと見ているが,2009年1〜3月も厳しい景気が続くと仮定している。

次にそれを受けた工場の稼動時期

Q. ―現在の状況で,建設中の堺工場の第10世代基板液晶パネル工場を予定通り稼働させるのか。公表している当初の生産能力3600シート/月,総投資額3800億円の計画に変更はないのか。

A. 2010年3月までに稼働を開始する計画は変えていない。亀山第1工場の稼働を停止し,大型液晶パネルの生産ラインの稼働率も40%に落としているため,在庫調整が進み,不足気味になってくる。2009年4〜6月は厳しい状況が続く見通しだが,7月以降は亀山の生産ラインをフル生産能力で稼働させても,堺工場の稼働が開始しなければ,年末商戦に向けて大型パネルが足りなくなる。

今後の売れ筋に関する読み

Q. ―現在の液晶テレビの売れ筋サイズは。今後,売れ筋のサイズが大型化していくことはあると見ているのか。

A. 今の売れ筋は,32型,42型である。堺工場が稼働を開始すれば,大型パネルのコストが下がり,売れ筋サイズはアップする方向になる。

需要減退は遅くとも2009年で解消するだろう、との読みのもと、景気回復後はこれまでの大画面化の流れが復活すると見込んでいる。つ、強気すぎる。

一方のパナソニック

「姫路工場の量産開始は延期する」「今後伸びる分野は普及価格帯」---パナソニック決算発表会見の質疑応答から | 日経 xTECH(クロステック)

まず景気見通し。

Q. ―ここまで経営状況が悪化したのは,(ITバブルの影響があった)2001年度以来だと思うが,前回とは何が違うか。また,前回は翌年度に「V字回復」を果たしたが,今回も同様にV字回復を果たせるという見通しはあるか。

A. 前回の不況との大きな違いは「100年に1度」といわれていることからも分かる通り,底が見えないこと。金融も実体経済も縮小しているという印象だ。自動車,パソコン,携帯電話機,AV商品…,どの業界も縮小傾向にある。回復には1〜2年はかかるのではないか。

次にそれを受けた工場の稼動時期

Q. ―普及価格帯に力を注いでいくのであれば,テレビは32V型あたりが売れ筋なのだから,(液晶パネルの工場である)姫路の量産開始を遅らせることはなく,尼崎だけ延期しておけばよいのではないか。

A. 確かにテレビは32V・37V型が売れ筋でかなりのウエートを占めているが,このあたりのサイズのパネル生産は茂原工場がメインであるので,引き続き茂原がやっていくことになる。また,姫路の量産延期は6カ月なので,そんなに影響はない。

今後の売れ筋に関する読み

Q. ―この不況を抜けると,需要は不況前と同じ形で戻ってくるのか。国内外の需要動向はどう変化しているのか。

A. これは私の見方だが,同じような戻り方はしない。今,高級商品と低価格商品のうち,売れているのは低価格商品。需要が戻ってきたとしても例えばクルマだったらハイブリッドなどに(消費者は)行くのではないか。必ずしも高級車が売れるような形にはならないだろうから,家電もそういう傾向になるのではないか。我々も普及価格帯のところを伸ばさなければならないと思っている。

景気が戻っても再び大画面全盛時代にはなりにくいのではないか、という読み。なんと悲観的な。

同じ市場に対して微妙に異なる読みをする2社

シャープとパナソニックという薄型テレビ市場で垂直統合路線(自前の工場でパネルを生産する)を取る2社が、将来の市場に対して結構違う方向性を見出している。

パナソニックの方は、今後も小型機が主流になるというのであれば、大型パネルに向けた2工場新設(特に尼崎のプラズマ)との整合性が取れるのか疑問。工場計画について、今後もう一段の見直しが入るんじゃないかなと思う。

一方のシャープは、逆に堺工場を理由付けするために強気の読みをしていると見えなくもない。

どちらの読みが正しいのか、今のところ知る由もないけど、同じ事実を見ながら違った将来を予想するプレイヤーが競争する。これだからこそ市場経済は面白い。一足先にパネルを他社からの供給に切り替える決断をしたソニー東芝がどう読んでいるのか調べてみたいところ。