金融腐蝕列島(消失)

文庫になったらしいので読んだ。

過去の金融腐蝕列島シリーズの完結編。第1作では副支店長だった竹中治夫さんも、最後は役員⇒常務⇒副頭取となって、「ああ、これは島耕作へのオマージュだったのか」と納得したりした。作者曰く「中年サラリーマンへの応援歌」らしいが。

今までのシリーズに比べて今回はなんとなくスッと読めた。2003年から2004年くらいにかけての三和銀行の軌跡がフィクションを交えて書かれている。大阪の建設会社の再建の部分とか、東海銀行のプリンスと呼ばれた方の話とか、信託の売却話が破談になって裁判沙汰になった話とか、自分も社会人になって銀行をお客様として仕事をしていた中で見たり聞いたりしたことが色々とリンクしたからだと思う。同時代の小説ならでは。

学生時代に行ったインターン先の大阪の金融機関で、際立って状態が悪い債権があって印象に残っているけど、それがこの本に出てきてびっくりした。本の中では竹中支店長が豪腕で再建したことになっているけど、実際は2003年ごろに倒産処理をしたんじゃなかったかな。確か。

あと、三和⇒UFJ⇒BTMUといたる一連の流れは、本当に色々と悲劇があったようで、今の会社で同僚となっている元行員とかに聞かされた話が、エッセンスとして盛り込まれていてなかなか読み応えがあった。

今回も相変わらず竹中平蔵がインチキ経済学者呼ばわりされてこき下ろされているが、ちょっと作者の偏見がひどいように思える。相談役に居座って老害扱いされる鈴木という爺さんが出てくるが、これはおそらく作者自身を登場させたものに違いない。

なんだかんだ言っても、金融機関(特に本部)の思考回路を理解できて、しかも読んでいて面白いシリーズだった。いい本だと思う。